HOME > 情報館 | 抗ウイルス薬の開発

抗ウイルス薬の開発

デング熱、ジカ熱、ウエストナイル熱、エボラ出血熱など日本人にとって次々と新たなウイルス感染が危惧されています。一般的にウイルス感染症に対してはワクチン接種による予防が効果を上げていますが、ワクチンが開発されていないウイルス、あるいはワクチンの効果が限定的なウイルス感染に対しては抗ウイルス薬が期待され、実際に治療に使われている薬剤があります。最近、より有効性のある抗インフルエンザウイルス薬、抗エイズウイルス薬、抗C型肝炎ウイルス薬などが開発され、臨床で期待された効果を発揮しています。

抗ウイルス薬の一般的な開発手順としての概要は図1の通りです。

*クリックで拡大

図1:薬剤開発の手順

  • 1.
  • 対象となるウイルスを試験管内で培養する技術と抗ウイルス効果の評価法を開発する。
  • 2.
  • 薬剤の候補となる物質を試験管内でウイルスに作用させて、ウイルスの増殖阻害を調べる(スクリーニング)。候補物質としては化学合成した物質、植物や微生物培養液より抽出・単離した物質、天然由来物質の化学的誘導体など、数としては数千~数十万の化合物の抗ウイルス効果を調べる。
  • 3.
  • 候補物質について更に効果を高めるための誘導体の合成とそれらの抗ウイルス評価、更に適切な時期に特許を申請する。
  • 4.
  • 候補物質について、ヒトの感染と同等あるいはヒトの感染に似た感染モデルを対象にして治療実験を行う。投与量、治療スケジュール、投与経路、剤型なども考慮する。
  • 5.
  • 抗ウイルス候補物質の安全性、すなわち、ヒトに投与した場合にどのような有害作用が起きるかを試験管内試験および動物試験で調べる。同時に薬理学的試験も行う。
  • 6.
  • ヒトを対象として臨床試験(治験)を行う。治験は第1相試験から順次3相試験まで行う。
  • 7.
  • 有効性・安全性・品質などを確認し、抗ウイルス薬として製造・販売の許可がもらえるように厚労省に申請する。専門家による審査で認められると、製造・販売ができる。
  • 8.
  • 販売後、治験では分からなかった薬の効果や副作用の情報を集め検証し、今後の医療に反映するために市販後調査を行う(第4相試験)。

このようにして抗ウイルス薬は開発されますが、優れた薬剤の開発には長い年月と莫大な資金が必要です。私たちは種々のウイルスを培養する技術を駆使して、抗ウイルス薬の開発をお手伝いしています。このほかに、各種消毒剤あるいは抗ウイルス物質を組み込んだ生活用品、衣類、建築資材などの抗ウイルス評価も行っています。

【お問い合わせ先】
一般財団法人 北里環境科学センター ウイルス部
TEL:042-778-9208 FAX:042-778-4551
E-mail:info@kitasato-e.or.jp
このページの先頭へ